少子高齢化に伴い生産年齢人口も減少する中、働く上での条件やライフイベントの影響、個人の志向性など、働き手のニーズは年々多様化しています。
働き手である若年齢層が高齢者層を支える現状の社会保障制度の仕組みは、近い将来成り立たなくなることが予想されます。また人生100年時代を迎えつつある今、定年退職したり子育てを終えて迎えるセカンドライフを充実させるには、十分な資金が必要となり、長く働き続けることも求められるでしょう。そのため就業機会を拡大し、意欲や能力を存分に発揮できる環境を作ることは、生産性の向上という点においても重要かつ喫緊の課題なのです。
そこで注目されているのが「副業・兼業」という働き方。特に人手不足が進む地方においては、能力も、経験や知見も豊富な都市部の人材を活用できる取り組みとして、大きな期待が寄せられています。
個々の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現を目指し、政府は積極的に「働き方改革」を提唱してきました。その施策の1つが「副業・兼業」の普及促進です。
厚生労働省は2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定。2020年9月の改訂では、労働時間や安全配慮への義務、秘密保持義務など、企業側が副業・兼業を認めて適切に対応することを明確化しています。さらに2022年7月の再改定において、副業・兼業により労働者が適切な職業を選択し、多様なキャリア形成を促進するため、企業に対して副業・兼業に関する情報の公表を推奨しています。
副業・兼業は、地域と関わる「関係人口」の側面でも注目されています。東京一極集中を是正したい政府は、東京圏への人口の転入と転出を、2024年度までに均衡させることを目標に取り組んでいます。
また、活力ある地域社会の実現を目指し、2024年度までに地方の若者を含めた就業者数を100万人増やすほか、ふるさとに戻るUターンや地方に移住するIターンによる就業者数などを6万人増やすこと、さらに2024年度には都市部に居住しながら、週末などに地方で過ごす「関係人口」の創出や拡大に取り組む地方自治体を1000団体に増やす、といった地方創生の基本方針を示しています。
自治体もこうした政府の方針を受けて、オープンイノベーションや起業など、都市部の人材が地方で活躍できる環境を整備し、地域活性化につなげようという動きを加速させてきました。しかしながら読売新聞社が今年2月に実施したアンケート調査から、地方の人口減少対策がうまく機能していない現状が浮き彫りになっています。
47都道府県と1741市区町村の首長を対象にした「全国自治体首長アンケート」の結果によると、回答した1606自治体のうち91%の首長が、それぞれの自治体の人口減少を「深刻」と受け止めていることが明らかになりました。各自治体とも少子化や人口減少対策として、子育て支援や地域経済振興策などに特に力を入れているにも関わらず、人口減少に歯止めがかからない状況が続いています。その主な理由として指摘されたのが、「若者や女性が働く場所がない」「就職や進学に伴う若年層の流出が止まらない」という地方の実情でした。
一方で、都市部で働く人の中には地方の地域と何らかの関わりを持ちたいと考えている人は増える傾向にあります。
2022年10月にみらいワークスが発表した「2022年度 首都圏大企業管理職に対する地方への就業意識調査」によれば、地方の企業で働く意欲のある人は52%と、2018年の調査開始以降はじめて過半数を超えました。特に35~44歳の若い世代は、昨年より12.1%増加の56.8%という高い数字になっています。「地方の中小企業での月1~3回程度の副業に興味があるか」という質問に対しては、約60%が「興味あり」「やや興味あり」と回答。「地方での副業を経験した後に、その地域への移住・転職に繋がる可能性があるか」の質問には「可能性あり」「やや可能性あり」と回答した人は約72%に達しています。
自らのスキルを地方で活かしたいプロフェッショナル人材と、課題解決に専門スキルを必要とする地方中小企業をマッチングするサイトも自治体ごとに整備され、事業課題のプロジェクト化も進んでいます。また副業人材として地方と関わったことをきっかけに、二拠点生活(デュアルライフ)をはじめる人もいます。
政府も、副業・兼業による関係人口の創出や増加は移住へつながる可能性が高いとみており、労働人口減少が深刻な地方への人材流動化を促進し、日本経済を活性化させるために不可欠な働き方として、今後の定着が望まれています。
※出典:みらいワークス総合研究所「2020年度 首都圏大企業管理職に対する『地方への就業意識調査』」
地方の人口流出に対する懸念が高まっていますが、進学のため首都圏に出ても、いずれは地元に戻りたいと希望する学生は、実は少なくありません。
マイナビが実施した「2023年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」によると、2023年3月卒業予定の全国の大学生・大学院生の62%が地元(Uターン含む)就職を希望しています。しかし学生の間にも「地元では働きたい仕事が見つからない」という声があることも事実。同調査において、地元就職を希望しない学生に、どのようなことが実現すれば地元に就職する可能性があるか聞いたところ、「働きたいと思うような企業が多くできる」「給料がよい就職先が多くできる」がともに4割を超えています。
こうした現状を踏まえ、首都圏企業に本社待遇で就職し、完全リモートワークにより地元で在宅、またはサテライトオフィスで従事する働き方や、地元企業に就職し首都圏への副業・兼業という働き方を推進するといった、独自の取り組みをスタートさせた自治体もあります。事業内容に賛同する首都圏企業を増やしながら、「時間」と「場所」を選ばない多様な働き方の選択肢を提供するなど、若者の地元定着を図り地方創生を進めています。
オフィスで働くことを前提としない働き方の浸透とともに、副業・兼業という働き方を自由に選択できる環境は、ますます整備が進むでしょう。
公的な文書には「副業と兼業は本業以外で収入を得るために行っている仕事」と定義されています。ですから本業も、副業・兼業も、仕事としての責任の重さはどれも同じはずです。リモートだから、副業だからと片手間にやるのではなく、どの仕事も一所懸命向き合うことで、お互いに信頼関係が生まれて次へのステップとなり、大切な居場所になるのです。
※出典:株式会社マイナビ「2023年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」
こちらのサイトでは、「副業・兼業」人材と地域をマッチングする自治体の情報、スキルを活かして地域の課題解決に取り組んだり、新しい事業をはじめるなど、精力的に活動する“先輩”の体験談を掲載しています。自分らしい地域との関わり方とは何か。そのヒントが、このサイトからきっと見つかります。
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