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株式会社大武・ルート工業 岩手県一関市

リモートワークの外注を積極的に受け入れ、人材不足の解消、製品の価値向上へ

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岩手県一関市に本社を構える株式会社大武・ルート工業は、1968年に創業。「トレッドミル」と「自動ねじ供給機」の開発・製造・販売を一貫して行い、その優れた品質が評価され、約50カ国に輸出しています。トレッドミルとは、足元で回転するベルトコンベアの上を走ったり、歩いたりするランニングマシンのようなもの。

自動ねじ供給機とは、作業員やロボットがネジを締める際の効率化・正確性向上を図るために、用途に応じたネジをドライバーでピックアップしやすいように供給してくれる機械です。

トレッドミル(足元で回転するベルトコンベアの上を走ったり、歩いたりするランニングマシンのようなもの)
自動ねじ供給機(作業員やロボットがネジを締める際の効率化・正確性向上を図るために、用途に応じたネジをドライバーでピックアップしやすいように供給してくれる機械)

必要に応じて機械の設計を東京在住の設計士に外注し、本社での打ち合わせからリモートによる図面作成までを委託しています。

これによって人材不足の解消や製品の価値向上といった、さまざまな効果が生まれています。その受け入れまでの経緯や社内への影響、課題、今後のデュアルライフの展望について、取締役営業本部長の苅部桂太さん、設計部部長の高橋宏さんにお話を伺いました。

写真左から、取締役営業本部長 苅部桂太氏、設計部部長 高橋宏氏

同社の製品の特徴について苅部さんは「どちらもニッチな市場で、汎用性の高い自社製品から取引先のニーズに応じたオーダーメイドでの製品開発まで可能なことです」と話し、さらに具体的に説明してくれました。「例えばトレッドミルは医療向けの超低床タイプやアスリート向けの高速タイプのものなど特殊なケースが数多くあり、製造から販売まで行える国内唯一のメーカーです。また、自動ねじ供給機を製造しているのも国内では弊社だけで、幅広い大きさや材質、用途のねじに対応できます」。

設計力を補うために、外部の設計士に業務を依頼。

大武・ルート工業では東京に在住し、別会社に勤務する設計士に、新製品の開発や既存製品の改修など、トレッドミルや自動ねじ供給機の設計を依頼しています。具体的な流れとしては、1年に1、2回、本社工場で実機・既存図面を見ながら、変更点や開発内容について打ち合わせを実施し、構想設計・製作図面作成を委託。その後はリモートワークがメインとなり、レビューを行った後、同社で試作・評価を行い、改善点をフィードバック。図面の完成までをお願いしているそうです。

このような働き方を受け入れるきっかけとなったのは、2015年頃、新たな製品開発に乗り出した時のこと。設計力を補うために、高橋さんが入社前に一緒に半導体製造装置を設計していた設計士に声を掛けたのが始まりでした。「新製品の要望を叶えるためには、新規設計に対して理解が早く、設計能力が高い彼の力が必要だと思いました。私も以前、リモートワークで設計士をしていたことがあるので、特に働き方として障壁になるようなことはないと思っていました」。

外部の設計士にリモートで発注をするのは、同社では初めてのこと。しかし、苅部さんは「社長は発明家なので、次々と新製品のアイデアが出てくるんです。それを実現するために必要な人材であれば、社長も“まずは試しにお願いしてみよう”と賛同してくれました」と話しました。なお、依頼にあたる費用は時給制とすることに。高橋さんは「彼自身の能力は知っており、必要な作業時間の見当がついていたため、時給を申告してもらう形態にしました」と説明しました。

株式会社大武・ルート工業 第二工場

リモートワークでの設計を依頼するにあたり、高橋さんは特にミスがないように図面を細かくチェックしていると言います。「今回の仕事の発注は図面を完成させるまでだったので、そこにミスがあると我々でフォローアップしなければなりません。オンラインだと、なかなかミスを見つけにくいので注意しました」。

実際に当初は社内でも、自らが設計していない製品のフォローアップをすることに否定的な意見も少数ながらあったそうです。「この仕事は設計段階でミスがあると、その後の作業が大変になるので、そういった声があるのも当然です。しかし、仕事をお願いした設計士はミスが少なく正確で、設計力も高いため、徐々にそういった声は聞こえなくなりました」と高橋さん。むしろ、その設計力を見て、社内の設計士にとっても勉強になり、大いに刺激になっている様子だと話します。「今では社長も何かあると『すぐ彼に相談して』というくらい信頼を得ていて、大きな助けになっています」。

こうして経営陣や現場からも評価されている、今回のデュアルライフの受け入れ。成功の要因を高橋さんに伺うと「お願いする人のことを知り尽くしていたこと」と答えました。「高いスキルはもちろん、温厚で誠実な人柄であることを知っていたため、安心してお願いすることができました。また、費用面を考えやすかったことも成功の要因かもしれません」。

今回のリモートワークを経て、高橋さんは「人員が限られる中で、例えば設計や社内でやりきれない業務は外部の方にお願いし、現場は品質を上げる作業に集中するといった棲み分けもできそうだと考えるようになりました」と手応えを語ります。

また、苅部さんは「業界の人材不足という課題の一つの解決策になるのでは」と語ります。「弊社では設計士を募集しているのですが、一関周辺に住んでいる人じゃないと移住して勤務するというのは難しい一面があります。そのようにマンパワーが限られている中で、首都圏や遠方に住む優秀な方の力を借りることができるのはありがたいですし、もし、これからもこういった関わり方をしてくれる人がいるのであれば増やしていきたいですね」。

今後の事業展開として、国内外に向けて「OHTAKE」ブランドを普及させ、売上や利益率の向上に努めていくという大武・ルート工業。その発展を支える力として、新たな働き方に期待が寄せられています。

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