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Interviewインタビュー

市川航介(いちかわ こうすけ)さん

株式会社遠藤自動車商会
代表取締役 遠藤芳志彦(えんどう よしひこ)さん

オンラインを活用し、地方の中小企業支援を実現

  • #副業・兼業

  • #福島県

福島県郡山市で中古車買取専門業を営む、株式会社遠藤自動車商会の遠藤芳志彦さんとリモートで打ち合わせをするのは、自ら経営者として東京・渋谷に事務所を構え、地方の中小企業支援事業に取り組む市川航介さん。

PR会社や代理店におけるクライアントワークをはじめ、パーソナル・トレーニング事業の全国展開などに携わってきた市川さんは2018年に独立し、その翌年に起業しました。現在は、さまざまな業種の経験から得た多様な知見を活かし、中小企業に対する経営企画の機能サポート事業を展開しています。

きっかけは副業人材を紹介するマッチングサイト

市川さんと遠藤自動車商会との出会いは、福島県の副業人材マッチングサイトでした。本業である経営課題の解決や新規事業の立ち上げ支援などを行っていたとき、「たまたま検索して見つけた」といいます。

「会社員時代に出張で仙台や秋田には行きましたが、福島には縁がありませんでした。また自動車買取業はこれまで関わったことのない業種でしたが、『SNSを活用した事業拡大支援』という要望に、私の持っているノウハウが何らかの形で役立つのではないかと考え、思い切ってエントリーすることにしたんです」

日本にたくさんの中小企業がある中で、その1社1社が元気になっていけば地域の雇用は増え、地域経済も活性化すると市川さんは話します。「東京をはじめ都会の会社に比べれば、地方には少なからず情報のギャップが生じています。国内最先端のことをやる必要はないと思いますが、少しIT化を取り入れたりするだけで、業務的に楽になる部分はあるはずですし、そういった意味でも地方の中小企業の支援をやらせていただくほうが、世の中に貢献できると思っています」

地方を元気にしたいと強い想いを抱く市川さん。副業人材として遠藤自動車商会との契約が決まりました。

代表取締役の遠藤さんから事業の現状を聞いた市川さんは、新たな営業先の開拓や再現性のある事業の仕組みづくりに課題があると認識しました。同時に、今後の事業展開において経営ビジョンを整理できるよう、具体的かつ的確な提案の必要性も感じていました。

遠藤自動車商会は中古車買取のほか、レンタカー事業や車の車検や整備点検なども行っており、2017年の操業開始より遠藤さんが一人で業務を担ってきました。「連絡をいただいたお客様の所に出向いて車を査定し、成立後に引き取ってオークションに出品して販売先を決めていきます。大半は海外輸出ですね」

中古車から事故車まで、どんな車も出張買取する遠藤さん。その一連の流れは頭の中にあり、作業はパソコン1台で事足りていましたが、案件が増えるにつれ業務は煩雑になり、遠藤さんの頭の中もキャパオーバーになったといいます。「膨れ上がった私の考えを整理して、課題解決への道筋を見出してくれる客観的視点が必要だと感じるようになり、県が運営する副業人材マッチングサイトに申し込みました」

これまでは口コミでの集客がほとんどでしたが、同業他社が増える中、集客拡大に向けSNSを活用した情報発信プランを模索しており、それに対するアドバイスを遠藤さんは必要としていました。

2020年の契約開始当初は、市川さんが郡山を訪れるなどして詰めた話し合いを重ね、ある程度の形が見えてからは月1回のリモート会議が中心です。

市川さんとのやり取りを通して、業務に関する数多くの具体的な提案を受けた遠藤さんですが、最も印象に残っているのは「体に気を付けて」という言葉だったといいます。「社長が体調を崩すと会社は止まってしまうので、人間ドッグは毎年受けるようにと助言をいただきました」。企業成長の大前提にあるのは健康を保つこと。その言葉に感化され人間ドッグを受診し、体調管理に留意するようになったそうです。

現場がやりたいことを整理し、形にする

遠藤さんの要望や今後の方針を把握した市川さんが最初に提案したのは、個人事業を法人化することでした。経理担当の人材を紹介し経理ソフトも導入。会社としての基盤を整えた上で、集客拡大に向けた販売戦略に着手します。

「顧客データベースの整理・管理やインスタグラムの運用など、課題を一つずつ解決する方策を提案していきました。遠藤さんはこちらからの提案を理解しスピーディーに取り組んでくれるので、私自身とてもやりがいを感じているし、ありがたいと思っています」

効果が顕著だったのがオンライン完結型査定でした。「WEB査定とLINE査定の仕組みは現代社会においては必須。特にLINE査定は、車の画像を送信すれば15分ほどで査定が終わるという手軽さもあり、すぐ成果に現れました。遠藤さんも手応えを感じてくれてうれしかったですね」

また、これまでやってこなかった折り込みチラシも、十分な効果を得ることができたそう。「新しい手法ではありませんが、地域特性を考え有効な策だと思いました」。会社員として、マーケティングや広告構成に携わってきた市川さんの豊富な経験が、ここでも活かされています。

「遠藤さんは判断に迷った時はすぐに連絡をくれるので、その都度解決できました。他の方から何らかの提案を受けたときも相談してくれるので、私が客観的に判断して『今でなくてもいいのでは?』と伝えるなど、コミュニケーションを図りながら遠隔でも支障なく仕事をやれています」

さらなる業務拡大を見据え社員を増やした遠藤自動車商会の今後の課題は“業務の見える化”です。「これまで遠藤さんが行ってきた仕事を他の社員ができるように、業務を切り出してみようと思っています。新しいことに取り組むのではなく、遠藤さんの中で完結していた業務を分散させ、何人かで回せるようにする。その準備をしたいと考えています」と市川さん。

「ちゃんとやるべきことをやれば事業はよくなるものだと私は捉えています。遠藤さんはそれを実践できる人。事業が成長できているのは遠藤さんの力だと思っています」と話してくれました。

大切なことはプロフェッショナルに頼るのではなく、自らが前向きに取り組むこと

遠藤自動車商会は知人からの紹介も多く、コロナ禍であっても経営は順調に推移してきました。海外における中古車市場は変わらず活況で、今後の成長が期待できる事業だと実感してきた遠藤さんにとって、市川さんとの出会いは「とても大きな出来事だった」といいます。「売上げを上げるプロで戦略もうまい。結果もすぐに表れて、私も前向きに取り組めるようになりました」

市川さんのサポートを得るようになって売上げは約5倍に上昇。今より広い場所に事務所を移転するなど、業務拡大に向けた準備も進んでいます。

一方で、遠藤さんと同じように副業人材サポートを受けながら、すぐに契約を解除してしまうケースは少なくないといいます。

「副業人材を受け入れる我々に求められるのは、スピーディーかつ具体的に実行すること。しかし、サポートさえしてもらえれば儲かるものだと考え、動かない人が多いのかもしれません。企業を成長させるためには自分がどんどん変わること。そしてお互いに良好な関係を築いていくことが大事だと思います」

会津地域にも営業所を出した遠藤さん。今後は出身地である南相馬を本拠地にしたいと夢を語ります。

「郡山のある中通りと会津はカバーしています。残りは浜通り。南相馬に進出して県内全域をカバーしたいですね」

今後も市川さんとの連携を深め、“業務の見える化”を進めながら、新たな集客の作戦や経営損益改善のためのコストカットなど、経営全般を強化したいと考えています。

1つの縁が次の縁を生み出し、新たな事業が始まる

リモートで業務が行えるとはいえ、「少なくとも一度は現地へ行くこと」を市川さんは推奨します。「見て得られる情報は意外に多い」というのがその理由です。

市川さんは郡山に来ることを楽しみにしています。「遠藤さんがいつもおいしい店に連れて行ってくれるので。お酒はたしなむ程度ですが、福島の地酒も魅力的ですね」

福島県とは縁もゆかりもありませんでしたが、遠藤さんの案件をきっかけに多様な関わりが増え、他の事業者との新たな案件も始まっているそうです。「はじめは年に数回訪れる交流人口だったのが、今や月に何度も訪れる関係人口になりつつあります」

遠くて大変と感じることもないそうです。「オンラインで普段のコミュニケーションはとれるし、郡山は時間的にもそう遠くないので、そこに対する課題感はありません。気温差があるので、冬が近くなるにつれて着ていくものが難しいなあと思うくらいですね(笑)」

最近は自治体の副業サービスによる地方案件が増えており、チャンスも多くなったという市川さんに、今後、副業を希望する人に対するアドバイスを伺うと、「本業を言い訳にしないこと」ときっぱり。

「私の場合、会社でやっていることと同じ内容なので、副業という線引きはさほどありませんが、本業が忙しいから対応や連絡が遅れた、できませんでした、という場合がよくあると聞いています。しかしそれは甘えだと思います」

相手からお金をいただく仕事に対して、“本業が忙しい”という個人的な事情は関係なく、副業も仕事であることに変わりはありません。「ぜひ責任を持ってやってほしい」と話す市川さん。

自身は現在、東京を拠点に30社ほどの中小企業支援を行っていますが、その関わりを増やし、地方をもっと元気にしていきたいと考えています。「東京などで主流となっている新しいことを導入できるようにすることは、もちろんいいことではあります。かといって東京が偉い訳ではないと考えているので、上からアドバイスするのではなく、相手の事情を汲み取り、よりよい提案をする、というスタンスが大切だと私は思っています」


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