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Interviewインタビュー

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ
マネージャー 住田オフィス責任者
マーケティングプロデューサー
伊藤 美希子(いとう みきこ)さん

都市と地域の価値観を交換する「よそ者」としての役割

  • #地方暮らしが好き

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伊藤さんは、東京のマーケティング会社に所属しながら、岩手県気仙郡住田町に拠点を置き、様々な企業のプロダクトやサービスのマーケティング支援と、住田町の地域づくりに携わるデュアルライフを送っています。

伊藤さんが所属するのは株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)というマーケティングの支援会社。BICPは「マーケティングの力で、人生を楽しめる人を増やす」というビジョンを掲げ、伊藤さんもマーケターとして働いています。
一方、住田町では地域づくりを支援する一般社団法人邑サポート(ゆうサポート)に所属し、まちづくりのサポートや地域のお祭りの手伝い、町から委託された事業の運営などに携わっています。
「マーケター」と「地域づくりサポーター」という2つの役割を持ち、二拠点生活を送る伊藤さんからデュアルライフのヒントを探ります。

デュアルライフのきっかけは東日本大震災でのボランティア活動

伊藤さんは東京の会社に勤めながら、東日本大震災の被災地支援ボランティアとして、2011年の8月から住田町へ通う生活をスタートさせます。
学生時代の先輩達が住田町を拠点にボランティア活動を始めたことを聞き、初めて住田町を訪れたそうです。「自分に何ができるのかはわからないが、何かをし続けなければ」という思いを抱きながら、平日休日問わず仕事の合間を縫って通うようになりました。

住田町では邑サポートの一員として、ボランティアの受け入れ先のコーディネートやイベント開催の手伝いなど、仮設住宅のコミュニティ支援をおこないました。
神奈川県横浜市出身の伊藤さんにとって、岩手県は旅行で訪れたことがあるくらいでしたが、町の方々や仮設住宅に住んでいた方々が温かく迎え入れてくれたことが嬉しくて、住田町が大事な場所になっていきます。

ボランティアから仕事へ。デュアルライフの本格化

邑サポートのコミュニティ支援活動が、徐々にボランティアから仕事へと変わっていきます。2014年には邑サポートを法人化し、伊藤さんは理事に就任。住田町の事務所兼住まいに生活用品が増えていき、長いときは1-2週間滞在するようになることでデュアルライフが本格化していきました。

東京の住まいから住田町までの移動は車やバス、新幹線、電車を乗り継ぎ、約5時間!
住田町へ来るときは山の景色を見て、都会で纏っている何かを脱ぐような感覚になり、逆に東京へ行くときはペタンコのスニーカーからヒールに履き替えてキビキビ動く、そんな生活が面白かったと言います。伊藤さんにとっては長い移動時間もまったく苦ではなく、むしろ気持ちを切り替える大切な時間なのだそうです。

住田に暮らし、2つの仕事が交わりはじめた

東京での仕事は住田町の地域づくりの仕事とは別のものとして考えていたという伊藤さん。
二拠点生活を送りながら、広告代理店やプランニング会社に勤務。その後、転職を経て2016年からマーケティング支援会社のBICPに勤めています。転職の際には、ひと月のうち3日程度は邑サポートの仕事をするという前提で、BICPに入社しました。

デュアルライフを送る中で、本業の仕事が疎かになるのではという焦りや、会社や同僚に対して申し訳ないという気持ちもあったそう。当時は今ほどリモートワークというものが確立されている状況ではなかったので、東京ではBICPの仕事、住田町では邑サポートの仕事というように場所によって仕事が分かれていて、その場その場で「やるしかない」という気持ちでがむしゃらに走っていたと言います。

2020年には新型コロナウィルスの影響で、メインの拠点を東京から住田町に移し、環境がガラリと変わったことで気付いたことが沢山あるそうです。
これまでは通っていた住田町にせっかく長い時間いるのに、マーケティングという専門分野を住田町で活かせていない現状に違和感を覚えます。そこで、この地域が抱える課題に対してマーケティングで役に立てることはできないかと考え、会社と相談し2021年6月に「BICP住田オフィス」が誕生することとなりました。

BICPは2021年1月にニューヨークオフィスも開設しており、地域の方が「この会社はNYオフィスの次に、住田オフィスをつくったらしいよ!」と嬉しそうに話しているのを聞いたそう。住田にオフィスを開設できたことに加え、町民の皆さんに期待してもらっていることを嬉しく感じると、伊藤さんは笑顔で話してくれました。
地域の方からモノづくりやマーケティングの相談を持ち掛けられたり、中学校や高齢者教室、商工会から「マーケティング勉強会」の依頼をされたりと、少しずつ出番が増えてきているといいます。

デュアルライフに必要な3つのポイント

伊藤さんが考える、デュアルライフを始める時に必要なことは3つ。
まずはその土地に『通ってみる』こと。
環境や雰囲気などをよく知ることで、その場所が自分に合っているか分かるのではないか、と教えてくれました。

次に、『決めすぎない』こと。
「最初からここに住む、暮らすと決めすぎずに流れに任せることも大切」と話してくれました。もしその土地が合わなかった時には一度仕切り直し、自分が生き生きと働けるような場所を新しく探すなど、柔軟な考えが必要なのだそう。

最後に『フリーライダーにならないことを心がける』こと。
都市の面白い部分と地域の豊かな自然を味わう……という風に、二地域居住は「いいとこどり」をしている危うさを伊藤さんは感じるそうです。だからこそ、地域や社会に深く関わることを意識しているといいます。「自分も地域の一員になれるように、勇気を出して一歩踏み込んでみることが良いのでは」とアドバイスをくれました。

以前に、学生時代の恩師から邑サポートの活動について「あなたたちの役割は外から違う価値観を持ち込むことなのかもね」と言われ、伊藤さんは自分たちの活動の意義について理解したと言います。都市部のスタンダードや新しい価値観を地域に持ち込むこと、地域のいい価値観を持ち出して外部へ伝えていくこと、そんな価値観の交換をすることが『よそ者』としての役割なのではないかと考えているそうです。

これからは「マーケティングの伊藤さん」としても地域に携わる

インタビュー中もオフィスの窓越しに町の人へ手を振ったり、町で会った人に話しかけたり、笑顔でふれあう伊藤さん。バイタリティ溢れる伊藤さんにとって「人との関係性が私を突き動かす原動力なのかもしれない」と、教えてくれました。

これからは「邑サポートの伊藤さん」に加えて「マーケティングの伊藤さん」として、住田町と関わっていきたいと話します。
地域づくりとマーケティングのフィールドとして住田町をずっと大切にしながらも、気仙地域全域や岩手県における地域の課題解決にも関わっていけるようにチャレンジしていきたいそうです。

さらに地元の子供たちには、この町に居ながらオンラインで都市部の仕事ができる、という今までになかった働き方や暮らし方の可能性を感じてもらえればと考えています。

有住(ありす)中学校での授業の様子
地域の高齢者教室でマーケティング勉強会をしている様子

岩手県でのデュアルライフに興味のある方へ

岩手県は、かつて宮沢賢治が「イーハトーブ」と名付け、心の中の理想郷として愛したふるさと。個性豊かな人々がいて、それぞれに岩手暮らしを楽しんでいます。そんな一人ひとりのこだわり方・暮らし方を、「部活動」の楽しさに見立て、移住ポータルサイト「イーハトー部」を立ち上げました。

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