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リテールプランズ合同会社 石川 里嘉(いしかわ りか)さん
予期せぬかたちで始まったデュアルライフ。楽しみながら前向きに
山形県真室川町にある真新しい一軒家で、デュアルライフの取材に応じていただいたのは石川里嘉さん。2016年にパートナーと共に独立開業。その後2019年にリテールプランズ合同会社として法人化しました。東京の虎ノ門に店舗を構えるコンビニエンスストアのフランチャイズ事業や外国人雇用に関するOJT事業※などを手掛けています。石川さんは1カ月に1回程度、東京からこの自宅に戻り、デュアルライフを送っています。
「当初は移動や交通費が大変だと感じたこともありましたが、道中に色々な土地に立ち寄ったり、友人に会ったり、工夫して楽しんでいます!」と石川さん。現在のデュアルライフを大変気に入っていると話しますが、このようなライフスタイルは元々想定していたものではなく、お父様の急逝から始まった突発的なものでした。今回は予期せぬかたちで始まったデュアルライフについてお伺いしました。
※OJT事業とは、職場で実際に働きながら業務への理解を深め、仕事に必要な知識やスキルを習得させる人材育成手法のこと。
コンビニ経営で外国人雇用を後押し
真室川町で生まれ育った石川さんは、その後仙台での生活に。製薬会社や映画配給会社の営業として勤務し、お子様と一緒に東京へ移住。その後、化粧品メーカーで商品をドラッグストアへ卸すマーケターなどをしていましたが、働き始めてからずっと40歳までに独立したいと考えていたそうです。
「若いと意見が通らなかったり、正当な評価を受けられなかったり、会社という組織にあまり合っていないなと感じていたんです。そこで常に40歳になったら独立したいと思っていて、ノウハウを身につけようと様々な業務に取り組んでいました」。
また、アクティブな石川さんは通信制の大学に入学し、働きながら学業に取り組み、卒業を果たしました。「高校生の頃から大学に進みたいと考えていて、当時は事情があって実現しませんでしたが、このまま大学へ行かずに後悔したくないと思ったんです。そこで娘が小学校に入学したタイミングで私も大学へ入学しました」。
その後、石川さんは2016年の40歳の時に独立開業。2019年にリテールプランズ合同会社を立ち上げました。石川さんはコンビニのフランチャイズ店経営という事業を選んだ理由について、前職までの経験が活かせることに加え、「生活に必要なものが、店舗という一つの箱に詰まっていることがすごいと思っていたんです」と話しました。
店舗経営の課題の一つは、従業員を集めることでした。店舗が建つ虎ノ門はオフィスや官公庁が集まり、周辺に住居がないため、アルバイトなどが集まりにくい環境でした。そこで石川さんが目をつけたのは、働き先が少ない留学生などの外国人雇用でした。
元々、お父様が自宅にホームステイの外国人を迎え入れていたこともあり、外国人と接することに抵抗がまったくないという石川さん。「せっかく一緒に働くというご縁で結ばれたのであれば、しっかり人材として育て上げたい」という思いから就労環境を整え、さらに外国人雇用管理士の資格を取得して積極的に外国人スタッフをサポートするなど、現在では自社以外の企業で外国人OJT実施の支援まで行っています。
父親の急逝により、真室川町へ足を運ぶように
石川さんがデュアルライフを送ることになったのは、2019年にお父様が急逝したことによるものでした。林業や農業を営んでいたお父様を「人や自然を育てるプロ」として尊敬し、普段から仕事のことなどを相談していたという石川さんは、「いずれ毎年夏に1カ月くらい真室川町に戻り、父親の農業の手伝いなどができれば」と計画していたといい、今回お邪魔したご自宅もそんな暮らしにそなえてお父様が新築したものでした。「間取りが変えられるよう、未完成の状態にしてくれたまま、父が亡くなってしまって。赤のシステムキッチンを選んだり、私が訪れる時のことを考えてくれていたみたいです」。
石川さんはお父様が大切にしてきたものを守るため、家や山林・田畑を相続することを決意。その管理などのために、頻繁に真室川町へ戻るようになりました。しかし、当初はまだデュアルライフを送ることは考えていなかったといいます。「3年間は父親のことだけを考えようと、仕事などでお世話になった人たちの元を訪れ、父について話を聞いて回りました」。
そうして地元の人と話していると「今度はいつ帰ってくるの?」と声を掛けられるようになり、自然と人脈が広がっていたという石川さん。そうしているうちに真室川町が抱える課題に気付きました。「父がお世話になっていた経営者の方が『人手不足で困っている』という話を聞き、自分の経験が役に立つのではと思いました」。
そして、石川さんは東京と真室川町のデュアルライフを本格的にスタート。外国人雇用の経験を活かし、真室川町の人材不足を解決できないかと虎ノ門の店舗で働いていた外国人スタッフをOJTとして町内の企業に紹介。外国人スタッフとOJT先をフォローしながら、ご自宅を外国人スタッフの住居として提供しています。「本人は東京にいた時よりも活き活きとしていて、ずっとここで働きたいと言っていますし、雇用先の会社の方々も熱心に働いてくれていると喜んでもらえています」。
さらにこの動きを地域全体に広げようと、外国人雇用に関する機関やその分野に強い行政書士を真室川町に紹介するなど、精力的に活動しています。
「東京と真室川町を行き来するようになって、互いのいいところ、足りないところを客観的に気付くことができるようになりました。その視点を仕事に活かすことで、社会に貢献していければと思っています」。
「デュアルライフをしないなんて考えられない」
真室川町に戻った際には外国人OJTのサポートに加えて、農業やご近所の田畑のお手伝いなどを行っているという石川さん。重機の免許も新たに取得し、ご自宅の裏側に広がる田んぼや山間の絶景を眺めながら、ゆっくりと焚き火をするのがお気に入りだと教えてくれました。
今後のデュアルライフについて石川さんは「やりたいことはたくさんあります!」といい、「地元や真室川町を訪れる人たちの集まりやすい場を作り、自身の暮らしを通して地元の魅力も発信していきたいですね」と語りました。
「好きな場所で、好きに働いて、好きに生きていける時代です。デュアルライフに興味がある人はぜひ挑戦してみてほしいですね」と石川さん。予期せぬかたちで始まったデュアルライフですが「環境が変わると気持ちもリフレッシュできますし、私はもうデュアルライフをしないなんて考えられないくらい、このライフスタイルを楽しんでいます!」と前向きに変化を受け入れ、仕事やプライベートに向き合っています。