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株式会社マルジンサンアップル 青森県平川市

青森のりんごを未来へ守るために。外部人材を活かし、会社の事業を拡大。

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 八甲田山と岩木山に囲まれた温暖で安定した気候、津軽平野の肥沃な土壌から、りんごの名産地として知られている青森県平川市。この場所でりんごの移出業を手掛けている株式会社マルジンサンアップルでは、ビジョンの立ち上げや人材採用など、会社の事業拡大に合わせて外部人材を積極的に活用しています。今回は、その活用方法や成果などについてご紹介します。

グランドデザインの策定にプロボノ※を活用。

※プロボノ…専門的なスキルや知識を活かして、ボランティアとして社会貢献する活動のこと

工場の壁面に大きく描かれた「甚八りんご」のイラスト

 マルジンサンアップルの歴史は、1948年に創業者である葛西甚八氏がりんごの移出に乗り出したことに始まります。その後、1989年に法人化。りんごの卸売を中心に事業を展開し、現在では自社農園での生産や加工品の開発、国内外への販売、創業者の名前を冠したブランドりんご「甚八りんご」の展開、6次産業化の推進などにより、地域のりんご産業を牽引してきました。しかし、同社の代表取締役社長・葛西万博さんは以前から、青森のりんご産業の未来を危惧していたと語ります。

マルジンサンアップルの代表取締役社長・葛西万博さん

 「りんご生産者の高齢化や後継者問題で、将来的にりんごの生産量が減ってしまうことを危惧しています。以前から何とか我々の力で生産量の減少を少しでも食い止めようと考えて、2019年頃に自社農園を持つために農業法人の立ち上げに乗り出しました」。

 葛西さんは設立した農業法人「甚八りんご農園」とマルジンサンアップルの事業を結びつけ、さらに地域を巻き込みながらりんご産業を発展させるという自身の想いとビジョンを多くの人に伝えるため、グランドデザインを取りまとめることにしました。同社では日頃から経営アドバイスを受けていたNPO法人から「外部人材を活用してみては」と、中小企業と外部人材を結ぶ兼業マッチングサイトを紹介され、東京の私鉄社員の方にプロボノとして協力してもらうことにしました。

 「本業で農業やまちづくりなどにも携わっており、豊富な知見を持っていた方で、プロボノとして、りんご1年分の報酬でお願いしました。1年間の中で数回、弊社まで足を運んでもらい、私の構想についてとことん話し合いました。それを多くの人に伝わりやすいような言葉やイラストなどにまとめていただきました」。

社長の右腕となる人材採用にも外部人材を活用。

 「りんご産地の未来を守り 青森県の未来を創る」というグランドデザインをビジョンとして掲げた同社では、それらを実現するべく葛西さんの右腕となる人材採用に乗り出します。葛西さんは「私がなかなか時間を取れないので、私の頭の中を理解して具現化してくれる社員を探していたんです」と話しました。

 この右腕となる社員のリクルーティングにも、マルジンサンアップルでは外部人材を活用。青森県出身で東京に在住し、人材紹介会社に勤務した経験を持つ小笠原さんという女性でした。「小笠原さんは兼業マッチングサイトに掲載していたビジョンに共感し、我々が東京のイベントに出展した際に訪ねて来てくれたんです。以前、東日本大震災の被災地で中小企業と外部人材のマッチングにも当たっていた方で、地元の青森でもそういうことができないかと探していて弊社を見つけたそうです」。

 その後、葛西さんは本社での面談などを重ね、自身のビジョンや思いを伝えました。「そもそも弊社がどういった会社か、さらにりんご産業の課題なども理解してもらった上で『こういうことをやりたいから、こういう人材が欲しいんだ』と説明しました。それを彼女が求人用に言語化し、求人ページを立ち上げてくれました」。

マルジンサンアップルの企画開発室長・村上純平さん

 そうして採用されたのが、現在、企画開発室長を務めている村上純平さんです。当時は埼玉の会社に勤めていましたが、配偶者の出身地である青森への移住を決め、求職中でした。「社長の思いなどが分かりやすく書かれた求人を見て、『ここなら0から1をつくるような挑戦ができると志望しました。ハローワークなどでは掲載されない、社長の想いや会社の雰囲気なども感じ取ることができたのが良かったですね」と村上さん。小笠原さんとオンライン面接を重ねた後、小笠原さん同席の元、葛西さんと面接を実施し、2020年に同社に入社しました。葛西さんは「面接でも対象者のことを深掘りする質問をしてくれたり、さすがリクルーティングのプロだなと感じました。おかげで期待通りの人材を採用することができました」と振り返りました。

 その後も同社ではリクルーティング業務を中心に小笠原さんに依頼。村上さんは「現在では社員20名のうち、5名が小笠原さんが採用に携わってくれた方です。希望通りの人材に出会えて、離職者もほとんどいないので助かっています」と教えてくれました。

徹底した自社分析から最適なマッチングを。

 マルジンサンアップルでは、人材採用以外の分野でも新商品の開発・加工を経験者に依頼するなど、外部人材を活用しています。その一人が、東北経済連合会で企画・広報グループ部長を務める乗田宏悦さんです。乗田さんはクラウドファンディングに支援したのをきっかけに、同社のサポートをすることに。村上さんは乗田さんに依頼した理由を次のように話しました。「乗田さんは中小企業診断士の資格を持ち、経営コンサルティングも行っているのでグランドデザインや中期計画を達成するためのKPIの設定、細かい相談ごとの壁打ちなどを行っていただいています」。

葛西さんと村上さんが信頼を寄せる、東北経済連合会の乗田宏悦さん

 村上さんは特に「進捗管理に助けられている」と続けました。「どうしても社員だけだと繁忙期に会議をしなくなったり、目標数値を追わなくなったりしてしまうのですが、外部の方がいると客観的に進捗を確かめられるので妥協することなく進行できますね」。

 これに対し葛西さんは「私が会議に参加できない時でも、乗田さんがコーディネーターとして、しっかり進行してくれるので非常にありがたいですね。単発的にコンサルの方にお願いすることもできますが、数年にわたって伴走してくれているので、より安心して任せることができています」と話しました。

 外部人材を積極的に活用し、成果を上げているお二人に、最後に外部人材の活用やデュアルライフについてのアドバイスをお願いしました。外部人材と接する機会が多い村上さんは「会社の内情をさらけ出すことじゃないでしょうか。よく見せようとしても、上手くいきません。現状や想いをすべて伝えることで、弊社のことを自分事のように思ってサポートしてくれる関係づくりが重要だと思います」と答えました。

 葛西さんは「外部人材と会社を仲介する存在を見つけること」「自社を分析すること」の2つが大切だと話してくれました。「県内の経営者に弊社の外部人材の事例を話す機会がよくあるのですが、外部人材を活用するという発想が全くないのが実情です。地域にコネクションがある方や組織は全国にたくさんあるので、そういった方々に会社のことを理解してもらい、適した人材を紹介してもらうのがいいと思います。そして、そのためには自社の“棚卸し”が欠かせません。会社の立ち位置や強み・弱みを徹底的に分析することで、課題を解決するために必要な人材の解像度を高めることができます」。そして、今後については「これまで通り、会社が事業拡大していく中で、サポートしてくれる人材が必要な時には、その都度積極的に外部の方にお願いしていきます」と外部人材への期待を語りました。

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