二拠点生活/副業・兼業のためのポータルサイト
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長野美鳳(ながの みほ)さん
HOSTEL Perch オーナー
伊藤 渉(いとう わたる)さん
副業人材が、つながり続ける大切な仲間に
長野美鳳さんは、出身地である新潟県三条市と、知人の住む岡山県倉敷市を拠点に、フリーランスデザイナーとして活動しています。
また、佐渡島で参加したプロジェクトをきっかけに、島内でのイベント開催に尽力するなど、活躍の場を広げ続けています。
長野さんは、新潟県内の大学でプロダクトデザインを学んだのち、三条市に隣接する燕市で、世界的に有名な包丁メーカーに就職。プロダクトデザイナーとして活躍する傍ら、地元の幼馴染と農業ユニットを結成し、自分たちで栽培した農作物を朝市で販売したり、フードメニューとしてキッチンカーで販売する活動も行ってきました。
パッケージやメニューボードのデザインはもちろん長野さんが担当。行く先々で、農作物や料理とともにデザインにも注目が集まり、ロゴマークなどを依頼されるようになったといいます。
人脈が広がり、デザイナーとしての仕事が軌道に乗ったタイミングで、長野さんは会社を辞め、フリーランスのデザイナーとして独立することにしました。
新潟県内の企業と副業人材を結ぶマッチングサイト「ともるい」で、佐渡島のゲストハウス『HOSTEL Perch(パーチ)』の募集を見つけたのは、ちょうどその頃。
「仕事の幅を広げたいと思ったのと、旅が好きだったのでゲストハウスのデザインに関わる仕事がしたいという希望もあり、やってみたいと思いました。フリーランスのデザイナーは場所にとらわれずに仕事が進められます。その利点を活かし、さまざまな土地に行って仕事をしてみたいという想いもありました」。
新潟県人にとって佐渡島は“修学旅行で行くところ”というイメージが強いといいます。「自然の豊かさや文化的な事象に興味を持つのは、小学生には難しいですよね。だからあまり楽しい思い出として残らないのかもしれません」。長野さん自身、文化や歴史の面白さを知り、自然の美しさに魅了されたのは大人になってからでした。「佐渡はいい所だなあ、と気づいた1年後にパーチの募集を見つけ、すぐに応募しました」。
県内の企業家なども含め、佐渡島への人口流入が増えはじめた時期だったそう。「コロナ禍で働き方が変わったことも影響していたのかもしれませんが、佐渡に面白そうな人が集まっている、という肌感があった」と長野さん。それも応募のきっかけになったと話してくれました。
客観的な視点を、同県の人に求めた意外な理由
新潟県佐渡島出身の伊藤渉さんが、島内初のゲストハウス『HOSTEL Perch』を開業したのは2018年のことでした。
築70年ほど経つ古い旅館をリノベーションした館内は、希少な昭和のガラス戸などを巧みに活用。居心地がよく、旅慣れた客に好評でした。またインバウンド需要の効果もあり、宿泊客は順調に推移していったといいます。
同時に“近くにある温泉”について、よく聞かれるようになったそう。「うちにはシャワーと小さな浴槽があるだけ。何かできないかなと考え、敷地内に残っていた明治時代の蔵を改装し、サウナにすることを思いつきました」。
宿名のperch(パーチ)は「止まり木」という意味。「島と島の外をつなぐコミュニティの場にしたいという想いがある」と伊藤さん。運営するカフェ・バーやコワーキングスペース、蔵サウナについても、宿泊者以外の利用を可能にしていますが、「もっと気軽に活用してもらいたい」と、初めて来た人でも動線がわかるフライヤーの設置を検討することにしました。
しかし毎日過ごす伊藤さんにとって、ここはわかり切った場所。知らない目線で見るのは難しい。そこで“外から目線”の提案を期待し「ともるい」に登録することにしました。2021年1月のことです。
内心では「誰も応募しないのでは」と思っていたそうですが、2週間ほどの間に5人の応募があり驚いたといいます。
5人全員から話しを聞いた伊藤さんは、「新潟界隈の人にお願いしたい」と考え、長野さんと、長岡市在住の金子一仁さんに依頼を決め、伊藤さんを含めた3人のプロジェクトで進行することにしました。
島外在住ではあるものの新潟県内の人材を選択した理由を「佐渡に対する心の距離を縮めたいから」と話します。「新潟の人にとって、佐渡は県内にある近い島ですが、心の距離は意外に遠い。修学旅行で行った、という思い出だけの場所という人がほとんどなんです。それを払拭できるのは県内の人なのかな、と思いました」。
当初の依頼とは異なる提案が、大きな成果を生み出す
プロジェクトの依頼は『HOSTEL Perch』内にフライヤーを設置する、というものでした。
しかしリモートによる話し合いを経て、長野さんは「SNSを活用した積極的な情報発信」を伊藤さんに提案していました。
「宿を快適に使ってもらう前に、佐渡に来てもらわなくてはいけません。それに、佐渡やパーチに対する渉さんの強いこだわりも発信したいと思いました」。サウナブームもあり、新設した蔵サウナの情報を発信することで県外客をぐっと増やせる、という目論見もあったといいます。「館内のデザインまわりを、という依頼でしたが、そこにリーチするお客さんを増やすのが先。パーチはもちろん、佐渡島でどんな過ごし方ができるのか、わかりやすく発信したほうが予約しやすくなるのでは?と思い、提案させてもらいました」。
長野さんの提案を快諾した伊藤さん。「パーチの使い方」と「島内の使い方」を可視化できるデザインにしインスタグラムで運用することになりました。
より効果的なビジュアルにするため、長野さんは旅のはじまりから終わりまでの道のりを可能な限り写真に収めていきました。そしてその実体験を、長野さん自身の言葉で表現し、インスタに投稿していったのです。
約1カ月半の契約期間のうち、島での滞在は1泊2日と限られていたため、分単位での移動になったそう。もちろん『HOSTEL Perch』もくまなく撮影。その後はリモートで詳しい情報について連絡を取り合い、アップロードの状況などを共有しながらインスタを運用していきました。
効果はすぐに表れました。ユーザー数はあっという間に1000人を数え、公開から1年を過ぎた今では2000人を突破。「インスタを見て島観光に来た」と話す県外客が増え、その客からのクチコミで次の客が来る、という現象も起きたといいます。
また、インスタにリンクするようホームページをリニューアル。「ターゲットを絞り込むことができました。その反応もめちゃくちゃ良かった!」と伊藤さん。「ビジュアルをがっつり作ってもらったことで、特に施設の機能について説明がしやすくなりました。“コワーキングスペースがあるので仕事ができますよ”とか“サウナがありますよ”とか。その内容が、ターゲットである40代中盤から下の層にぴったりマッチしたのだと思います」。
可視化することで具体的な情報のキャッチボールがしやすくなり、それは新潟に住む人の、佐渡島に対する心の距離をグッと縮める効果もあったようです。
「インスタやホームページは完全に県外の人向けだと思っていました。でも『インスタで紹介していたコースを回ってきたよ』と泊まりにくる新潟県民も増えています」。
島内の人も、カフェ・バーや蔵サウナをよく利用してくれるようになったそうです。
大切な仲間として関係は継続中
「プロジェクトが終了したあとも、渉さんとは佐渡で一緒にイベントやったり、共通の友達を介して時間を共有したりしています。それが仕事につながればいいな、と思います(笑)」と長野さん。
インスタ運営のみならず、ホームページ刷新にも関わった『HOSTEL Perch』は、自分のポートフォリオの中でも思い入れの強いクライアントだと話します。「たまに訪れるたびに、ちょっとずつアップデートして、止まらずにいい宿にしているので、また“いいところ”を発信できる機会があればいいですね」
実は長野さん、それまでSNSを手掛けたことはなかったといいます。「これからフリーでやるというタイミングで、ほんとうに成果を残せるのか、最後までやり切れるのか。仕事への責任感に対する不安は正直ありましたが、20年近くデザイナーとして活躍している大ベテランの金子さんに並走させてもらいました。それに、どうしてもやりたかったんです」。その理由を聞くと、「パーチはすごくいいお宿だと思ったので」と話します。「シンプルに『こうしたらいいのにな』という案が次々に浮かんできたんです。それを形にしたいという、デザイナーの本能みたいなものが働いたんだと思います。わからないことは渉さんに連絡すればすぐに情報を得られたので、スムーズに進めることもできました」。
新潟と岡山に拠点を持つ長野さん。農作物の収穫がなく、キッチンカーを稼働できなくなる冬から4月くらいまでは主に岡山に滞在し、デザインの仕事をメインに活動していますが、今後は岡山をはじめいろいろな地域でキッチンカーを走らせたいと話します。「デザインの仕事は場所に縛られずにできるのですが、そこに住む地域の人たちと関わり合いを持ちながらやる仕事もいいなと感じています。それを可能にするのがキッチンカーだと思うんです。その土地の食材を使って何ができるのか。おいしさを伝えることも含め考えてみます」。
チャレンジ精神旺盛な長野さんに、デュアルライフを考えている人へのアドバイスをいただきました。
「やりたいことがあれば、迷わずシフトしたほうがいいと思います。思った時が吉日です!それに頑張っていると、応援してくれる人も出てきますから」。
オンラインで何でも事足りる時代だからこそ、人とつながることは面白いし、大事なことだといいます。「正直、渉さんに会って印象が変わりました。渉さんの人間性がよく理解できて、会って良かったなと思っています」。
新潟県でのデュアルライフに興味のある方へ
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